現在6年目のITエンジニアである筆者ですが、過去には客先常駐による偽装請負の被害にも遭った事のある者です。
(だいぶ、悪徳なSES(客先常駐)の会社でした)
(SES契約とは?違法なブラックIT企業に注意してください)
※偽装請負とは・・・契約上は請負契約や業務委託なのにも関わらず、実態は「労働者派遣」とまったく変わらない状態を意味します。
具体的に言うと、派遣契約では派遣先からの業務指示や命令はOK!なのですが、請負契約や業務委託ではNG(法律的に)なのです。にも関わらず、派遣契約と同じように派遣先からの業務指示や命令が出ている状態を指します。
(派遣先から、「間に合わないなら残業しろ!」「休日出勤しろ」と指示・命令されるような状態です)
しかも、IT業界のSIer界隈では、この偽装請負の状態が当たり前のように多くの現場で横行しており、それが問題視されているわけです。
特に、派遣先に労働者を常駐させる、いわゆる「客先常駐」の場合には、この偽装請負になりがちなんですね(そりゃ、同じ現場(客先)で労働をするわけですからね。偽装請負になってしまうのも分かりますが。。)
というわけで、今回はこの偽装請負が違反している法律やその罰則内容について。
また、労働者側のデメリットについてもまとめていきたいと思います。
以下、目次。
- 「偽装請負」が違反する法律と罰則内容について
- 労働者に与えるデメリット
- 法律違反である偽装請負への対策
「偽装請負」が違反する法律と罰則内容について ~労働者派遣法と職業安定法
まずは、偽装請負がどのような法律に違反するのか。またどのような罰則があるのか。についてですが、
偽装請負は、大きく以下2つの法律に違反しています。
「労働者派遣法」、「職業安定法」
というわけで、これら2つの違反内容や罰則について以下にまとめてみました。
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「職業安定法」
偽装請負は、この職業安定法:第44条:労働者供給事業の禁止に違反します。
(以下、第44条の記載)何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。
※上記の「次条」というのは厚生労働省から許可を受ける必要があり、かつ無償の労働供給が対象になります(なので給料ありきの労働には関係ありません)
会社は労働者と雇用契約を交わしており、労働法の元に労働者を管理しなければいけません。なので当然自社の労働者を他の会社に派遣し管理させるような事はしてはいけません。(派遣事業者以外)
要は、無許可での人材派遣は職業安定法に違反するというわけです
罰則の対象としては、発注側(派遣先)も受注側(派遣元)も両方が対象となり、両者とも「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が科されます。
続いて、
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「労働者派遣法」
偽装請負は、この「労働者派遣法」にも違反し、
労働者派遣事業者としての(国からの)許可を貰っていなかったり、許可されていてもその内容と実態がまったく違っている場合は違反となります。
(派遣じゃなく請負契約にも関わらず、派遣先から派遣労働者への指示が出されている「偽装請負」なんかは、上記に該当するわけですね。)
罰則対象は、発注側(派遣先)も受注側(派遣元)も両方が対象となり、両者とも「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(労働者派遣法第59条2号)」が科されます。
さらに行政により、両者ともに是正指導がおこなわれ、場合によっては派遣事業の停止命令もありえます。
以上、偽装請負が違反する2つの法律についてでした。
SIer界隈では、なぜこの偽装請負が法律違反であるにも関わらず、多くの現場で当たり前のように横行してしまっているのか。
それはやはり、派遣先(発注側)にとっては、自分たちの管轄内において業務指示をした方が効率的で都合がいいわけですし(特に、派遣先に常駐するケースの場合は)
また、受注側も仕事を受注しお金を貰っているわけで、発注側の要望を無碍に断れないといった問題があるわけですね
さらに、SIerの現場では多くの会社が一つのプロジェクトに参画するケースが多々あるのですが、その場合「多重下請構造」と呼ばれる会社が何層にも入り混じって構成されています。
この多重下請構造では、A社がB社に労働者を派遣し、さらにB社はその労働者をC社へ派遣する。。。といった、2重・3重に労働者を派遣する状態が横行しています。
ですが、法律で「多重派遣」は禁止されているため、実態は派遣なのにも関わらず、「請負」や「業務委託」といった契約で表向きは通そうとする意図があるわけです。
あとは、そもそも「偽装請負」そのものや、それが法律違反である事すら知らない会社や労働者も現状かなり多いでしょう。
以下も参考にしてください。
IT業界によくある「偽装請負」が労働者に与えるデメリットについて
続いて、労働者の立場に立ったデメリットについてです。以下にまとめてみました。
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「劣悪な労働状況になりがち。」
偽装請負が横行している現場は大体が客先常駐(派遣先にて労働)として派遣されてきており、そのような労働者は非常に劣悪な労働状況になる事が多いです。
「長時間労働」「休日出勤」「パワハラ」「無理なスケジュールでの開発」「開発だけじゃなく、雑務や単純作業も指示される」etcまるで、奴隷のように扱われるケースも。
このようになってしまう根本的な原因は、「偽装請負の場合、客先の会社(派遣される会社)は、派遣労働者に対しての法的な責任を一切もたない」からです。
雇用契約はあくまで自社(派遣元)になりますからね。
そして、客先は派遣労働者に対しての責任を持たないからこそ、理不尽な指示や命令を当たり前のように行ってくるわけですね。
そして、労働者についても仕事を受注している側なので、客先の要求を断ることができないといった負のループに陥るわけです。
「雇用関係も法的な責任も無いし、どうせこのプロジェクトが終わるまでの関係だ。だから単なる使い捨てなんだよ。派遣労働者なんて」このように思ってる会社が実際に多く存在しているわけですね。
さらに多重派遣のような実態のプロジェクト現場だと、より上記のような状態は顕著となるでしょう。
もう誰がどこの会社の人材でどのように派遣されてきたのか・・・それすら顧客は把握できておらず、万が一事故や怪我が発生した場合でも、責任の所在が曖昧になる可能性が大です。
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「残業代が出ない。。。」
偽装請負は契約的には「請負」の扱いになるので、労働時間は最初の契約内容によって決められます。
なので、例えば「月200時間までは一律●●万円」
このような契約になっていれば、月200時間いくまでは、残業しても残業代が出る事はありません。
そして、悪徳な顧客であれば、上限ギリギリまで派遣労働者を使い倒してやろう!なんて考えている会社も多いので、長時間労働かつサービス残業をさせられている人も多いのがブラックSIer現場の現状です。
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「基本的に給料は低い」
こちらもSIer業界では通説となっている事ですが、偽装請負をやっているような客先常駐の会社は基本的に給料は少ないです。
(20代だと20万以下とか)
それは、SIer界隈でよくある「多重下請構造」では、上位層にいる会社がエンド顧客からのお金(売上げ)をガッポリ搾取して、下位層にいる会社には微々たる金額しか行き渡りません。。
当然、下位層にいる労働者の給料は少なくなってしまう。というわけですね。
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「安定しない」
これも(偽装請負をやっている)客先常駐の会社あるあるなのですが、そこで働いている労働者は、労働現場も労働時間も労働ルールも安定しません。。。
それは、プロジェクトごとに現場(常駐先)が変わるので、その通度現場や時間が変更されるわけですね。
これは労働者からしたら、肉体的にも精神的にもとにかく安定しないですよね。。。
プロジェクトごとに毎回現場も変わって、通勤時間も労働時間も、人間関係も一から構築していかなければなりません。。
これも、大きなデメリットの一つですね。
以上、偽装請負の会社で働く労働者のデメリットでした。
以下も参考にしてください。
→ 客先常駐とは?IT派遣・SIerとの違いと見分け方 ~やばい・やめとけと言われる理由と、楽しいと感じる向いている人の特徴
法律違反である「偽装請負」への対策について
というわけで、これまで述べてきた通り法律違反で労働者にも様々なデメリットを与えてしまう「偽装請負」ですが、
この偽装請負が横行しないようにするには、どのような対策をすれば良いでしょうか。
以下にザッとまとめてみました。
- 受注側(労働者を送る側)の会社がとにかく注意し、受注側の経営者や管理者が発注側に口を酸っぱくして注意喚起する
- 受注側の経営者や管理者が定期的に常駐先に通い、チェックすると共に労働者と発注元から要望等を聞き出す
- 常駐先に物理的にパーティションを立てたり部屋を分けたりしてもらう(可能であれば)
こんなところですかね。
どっちにしても、カギとなるのは受注元の会社になりますね(経営者や責任者)
ただこうやって言うのは簡単ですが、実際は仕事を受注してお金をもらう立場上、かなり厳しいかと思います。
なので労働者としてヤレる事は、もうさっさと転職することですね。
とにかく、客先常駐を主とした会社から抜け出すことです。
自社サービスをやっている会社や自社開発(元請け)の会社に絞って転職活動をすると良いでしょう。
では。