IT業界にエンジニアとして勤め始めてから6年が経った私(このブログ管理者)ですが、今回はIT派遣や客先常駐の経験がある身として、業界に蔓延る「二重派遣」という闇について、色々と書いていきたいと思います。
二重派遣とは・・・以下のように派遣元と派遣先の間に仲介会社(派遣会社)が入っている状態を指し、仲介会社は単に労働者を仲介してマージン(手数料)を取っているだけなので、「人売り会社」なんて揶揄されてます。
もっと酷いと、三重・四重と仲介会社が何社も入っている事もよくあることです。
(僕自身の経験として、これまでの最高は六重派遣を経験したことがあります)
これは、ITのSIer界隈が以下のような多重下請によるピラミッド構造になっている事がとても多いからです。
上位層が大手のSIerで、下にいけばいくほど賃金も安くなり、労働者の人権を侵害するような状態が横行しています。(業界全体の問題)
最下層の労働者は奴隷扱い。毎日終電、休日出勤や徹夜は当たり前、パワハラが横行している。。。etc
(【IT業界の闇】多重派遣・多重下請け構造(SESや請負)とは何なのか?)
で、上記のような複数社がまたがったピラミッド構造のプロジェクトによって、二重派遣や多重派遣なんかが横行しているわけですね。
ただ二重派遣は「法律違反」にあたり罰則もあります。
というわけで今回は、摘発された事例等、その辺の事を詳細にまとめていきたいと思います。
以下、目次
- 「二重派遣」は法律違反で罰則もある
- 二重派遣の労働者への様々な不利益について
- 法律違反にならないようにする方法・抜け道について。IT業界に蔓延している偽装請負
IT業界によくある「二重派遣」は法律違反で罰則もあります
上述の通り、二重派遣は法律違反になります。
具体的には、「労働基準法-第1章第6条違反(中間搾取の禁止)」と、「職業安定法-第44条の労働者供給事業の禁止規定違反」
と、2つの法律に違反しているわけです。
そして、罰則内容はそれぞれ
- 「労働基準法」・・・1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が適用されます。
- 「職業安定法」・・・1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が適用されます。
罰則の対象は、二重派遣に関わっている全ての企業が該当します。派遣元・仲介会社・派遣先のすべてですね。ただし、二重派遣が行われていることを知らなかった場合は、罰則の対象外となるようです。
以下のニュース記事は、実際に二重派遣(多重派遣)によって摘発された企業の事例が記載されています。記載によると「派遣事業の改善命令や一時停止命令」がくだされているようです(参考までに)
→ 日経TECH:SE派遣3社に業務停止命令などの行政処分、IT企業への「多重派遣」で
このように二重派遣は法律違反で、関わった企業すべてが罰則の対象なので影響大です。
(以下も、参考にしてみてください)
二重派遣は労働者(ITエンジニア等)への権利侵害等、様々な不利益があります
続いて、二重派遣がエンジニア等の労働者にとってどのような不利益があるのか・・・以下にまとめてみました。
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「労災事故等が起きたときに、責任の所在が曖昧になってしまう。。」
本来であれば、派遣労働者が労災に遭った場合、派遣会社(派遣元)の労災保険が適用されるわけですが、
労災保険の給付申請をするときに、派遣先の企業が「どこで、どんな業務をやっていて、どのように労災事故に遭ってしまったのか」を証明する必要があるわけです。
ですが、二重派遣の場合上記のような証明ができなくなるケースが多々あります。(派遣先が別の会社にその労働者を派遣していたら、その時の状況なんて知るわけがありませんよね。。)
そして、上記のような会社は「二重派遣」が明らかになることを嫌うために、事実を捻じ曲げたり。。。なんて事もあるわけです。結果的に労災保険が降りなかった。って事になってしまうわけですね。
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「劣悪な労働環境になりやすい」
上述している多重下請によるピラミッド構造。
派遣エンジニアやSESエンジニアは、これらの下層に位置することがほとんどです。そして下層に行けば行くほど一般的に労働環境は悪くなっていきます。
実際に僕の経験では、業務スペースがめちゃくちゃ狭かったり、PCのスペックがかなり悪かったり、そもそも座席が無かったりと。。
そして、現場のリーダーやマネージャーによっては、深夜残業や休日出勤を無理強いしてきたりと。
あっちからしたら、「替えはいくらでも居るんだよ!」って事で、理不尽な要求をしてこられやすい環境なわけですね。
それは、二重派遣になるとより顕著で、本来であれば「派遣契約」に記載のある範疇で労働をしていくわけですが、
二重派遣の場合には、実際の労働現場は「派遣契約」を結んだ会社じゃなかったりしますからね。。。それで契約内容無視の働き方を要求してくるわけです。
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「給料が低い。」
通常であれば、派遣先企業が派遣元企業に支払う金額の中から、一部派遣元企業に引かれた金額が給料となるのですが、
二重派遣であれば、さらに間にいる中間搾取会社のマージンもマイナスされるので、その分労働者の給料が低くなってしまうわけですね。
なので、多重下請によるピラミッド構造の最下層の会社のエンジニアなんかは、ほんとう微々たる給料しかもらってない事が多いです。(月20万いかないとか)
以上、二重派遣による労働者の不利益まとめでした。
(以下も、参考にしてみてください)
二重派遣を法律違反にならないようにする方法・抜け道について。IT業界に蔓延している偽装請負
上述の通り、二重派遣は法律違反にあたるわけですが、それでもIT業界には二重派遣のような状態が当たり前のように蔓延っています。
それは、法律の抜け道があるというか、うまく違反にならないようにする方法があるからですね。実態は多重派遣と何ら変わらないのに。。。
以下が、その抜け道のパターンになります。
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「違反にならないパターン」
派遣元 →(派遣契約) 仲介会社 →(請負契約) (最終的な)派遣先企業。
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「違反なパターン」
派遣元 →(派遣契約) 仲介会社 →(派遣契約) (最終的な)派遣先企業。
上記のように、間にいる仲介会社が「派遣」ではなく「請負」の契約形態であれば、法律違反にはならないんですね。
(IT業界の派遣契約・請負契約・SES契約の違いについてまとめてみた)
※ただし、請負の形態も注意が必要で、請負の場合は派遣先企業から派遣労働者への業務指示があってはいけません。
もし仮に、派遣先企業からの業務指示によって労働をしているのであれば、それは「偽装請負」となって、こちらも法律違反となってしまいます。
(偽装請負とは?IT業界に蔓延するこの問題は法律違反で罰則もあります)
(派遣先(発注側)にとっては、自分たちの業務指示によって動いてもらった方が効率的で都合がいいし、受注側は仕事をもらっている手前、発注側の要望を断れないといった問題があるわけですね)
というわけで今回は「二重派遣」について色々と書いてきましたが、6年間ITの業界で働いてきた者としては、派遣や請負(客先常駐)ではなく、自社で開発できるような会社がオススメです。
今後IT企業への就職や転職を考えている人は、ぜひ参考にしてください。