二重派遣とは

二重派遣とは?禁止され罰則ありなのに、当たり前の実態 ~業務委託による抜け道で違法にならないケースも

どーもー、某IT系の会社でエンジニアとして働ている者です(当ブログの管理人です)

2022年、総務省の「労働力調査」では、非正規の社員が全体の約4割弱を占め、派遣社員は全体の2.6%(149万人)を占めています。

このように、一般化している人材派遣ですが、法律的には様々な制約が設けられています(派遣労働者を守るために)

なかでも、今回紹介していく「二重派遣」は、違法行為となり罰則も設けられています。

ただし、実際のところは、抜け道があり違法にならないケースも多く存在しています(その実態は、二重派遣と同じなのに、、)

というわけで今回の記事では、二重派遣について、その仕組みや、

二重派遣が当たり前と常態化されている現実について、法律の抜け道となっているケースの詳細を、順に解説していきます。

以下、目次

  1. 二重派遣とは?違法で罰則もあり禁止されています ~仕組みを分かりやすく図解
  2. 二重派遣が当たり前となっている実態 ~業務委託(偽装請負)による抜け道で違法にならないケースも
  3. 二重派遣が違法で禁止されている理由と問題点 ~派遣労働者のデメリット
  4. 二重派遣を予防・防止する方法 ~相談・告発先について

二重派遣とは?違法で罰則もあり禁止されています ~仕組みを分かりやすく図解

二重派遣とは。その仕組みを分かりやすく図解-2

二重派遣とは、上記のように派遣元と派遣先を仲介している会社(二重派遣をしている会社)が入っている状態を指し、仲介会社は単に派遣労働者を仲介してマージン(手数料)を取っているだけの状態となります。

冒頭で記載している通り、このような二重派遣は法律的に違法となり、罰則も設けられています。

※ちなみに、通常の労働者派遣は、派遣会社と派遣労働者が雇用契約を結んでいる状態となります。

派遣の契約内容や構成イメージの図解-1

ただし、業務の指揮命令権は、派遣先の企業にあるため、派遣労働者は派遣先から指示を受けて仕事をすることになります。

とはいえ、何でも派遣先の言いなりということではなく、

事前に、派遣会社と派遣先の会社間で、派遣契約を結んでいて、そこで、勤務場所や労働時間、賃金などの労働条件が明確に定められているため、その範疇を逸脱することはできません。

例えば、不当に残業をさせたりする事はできないわけですね。

一方で、

二重派遣では、派遣会社と派遣契約を結んだ派遣先の企業が、別の企業に派遣労働者を再派遣させることを指し、法律違反となるわけですが、

具体的には、以下2つの法律に違反することになります。

  • 「労働基準法」

    第1章・第6条:「中間搾取の禁止」への抵触となり、派遣会社(労働者)と、派遣先を仲介して、仲介手数料をピンハネすることを禁止する法律です。

    ちなみに、罰則を受ける企業は、派遣労働者を再派遣した企業となります。

    罰則内容は、1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が適用されます。

  • 「職業安定法」

    第44条:「労働者供給事業の禁止」への抵触となり、雇用関係のない労働者を別の企業に派遣する行為を労働者供給として禁止しています。

    ※本来の派遣会社は、派遣労働者とちゃんと雇用契約を結んでいるため、労働者供給には該当しません。

    ちなみに、罰則を受ける企業は、再派遣をおこなった会社と、再派遣を受け入れた企業が該当します。

    (ただし、二重派遣であることを知らなかった場合、再派遣を受け入れていた企業は罰則はありません)

    罰則内容は、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が適用されます。

以上です。

というわけで、基本的には再派遣をおこなった会社が罰則を受ける形となります。

ただし、法律的に、再派遣をするだけでは違法となりません。

例えば、A社がB社へ派遣労働者を派遣して、その後、B社がC社へ再派遣するとします。

この時、B社の社員がC社へ常駐して、派遣労働者に業務指示を出すのであれば、違法とはならないのです。

これは、業務の指揮命令権がちゃんとB社にある。という事になるからです。

(この辺は、ややこしいですね、、)

二重派遣が当たり前となっている実態 ~業務委託契約(偽装請負)による抜け道で違法にならないケース

二重派遣が違法なのに、当たり前となっている抜け道-1

前章で解説してきた通り、二重派遣は法的に違法となり禁止されているわけですが、

実際には、多くの現場で二重派遣と同じような状況が常態化されている現実があります。

それが、今回紹介していく法律の抜け道となる「偽装請負」です。

現在、法律的に派遣と似ている契約が、いくつかあります。

  1. 請負契約(業務委託契約の一種):指揮命令権が契約元の会社
  2. 準委任契約(業務委託契約の一種):指揮命令権が契約元の会社
  3. 出向契約:指揮命令権が契約先の会社

※派遣契約は、指揮命令権が契約先(派遣先)の会社となります。

※各契約については、以下の記事も参考としてください。

→ 派遣契約と業務委託契約(請負、準委任:SES)の違いを分かりやすく図解 ~メリット・デメリットも

上記は、いずれも派遣と同じように、労働者を契約先の企業へ常駐させ仕事をさせることが可能な契約です。

さらに、派遣契約以外のいずれも二重以上の再契約を可能とします(以下、例)

A社 →(請負) B社 →(請負) C社

さらに、以下のような構成も法律的には違法となりません(派遣が二重になっているわけでは無いので)

・A社 →(派遣) B社 →(請負) C社

こちら、上述の通り法律的には全く問題はないのですが、今回紹介していく法律の抜け道となるパターンであり、

実際には、二重派遣と何も変わらない「偽装請負」となり得る可能性があります。

本来、請負契約では契約先の企業が、労働者への業務指示をしてはいけません(指揮命令権が無いため)

にも関わらず、派遣と同じように、業務指示がおこなわれているケースを、「偽装請負」と呼びます(派遣契約では、派遣先の企業が指揮命令権を持っているため)

そのため、実際のところは、二重派遣と何も変わらない状況となっているわけですね。

当然、この偽装請負も法律的に違法となります。

なのですが、私の働くIT業界でも、多くの現場がこの偽装請負・二重派遣となっており、常態化しているのが当たり前となっています。

派遣先からしたら、自分たちの業務指示を聞いてもらった方が効率的で都合もいいですし、

派遣元は、仕事を受注・貰っている手前、パワーバランス的に何も言わず、暗黙の了解としているケースが非常に多いわけですね。

実際に、この偽装請負・二重派遣によって、摘発された事例もいくつかあり、

以下は、2014年の事例となりますが、

システムエンジニアを派遣する事業者:3社に対して、労働者派遣法に違反したとして行政処分を出した事例となります。

→ 日経TECH:SE派遣3社に業務停止命令などの行政処分、IT企業への「多重派遣」で

※偽装請負については、以下の記事でも解説しているので参考としてください。

偽装請負とは?法律違反となる判断基準と事例・罰則について ~派遣や業務委託(準委任)契約との違いも

二重派遣が違法で禁止される理由と問題点 ~派遣労働者へのデメリット

二重派遣の問題点となる労働者のデメリット-1

続いて、二重派遣がなぜ禁止されているのか。どのような問題点があるのか。

派遣労働者が被(こうむ)るデメリットの観点で、以下にまとめてみました。

  1. 責任の所在が曖昧になってしまう ~派遣労働者に事故等で何かあったとき
  2. 労働条件が守られない可能性がある
  3. 給料が低くなりがちである

では、順に解説していきます。

1、責任の所在が曖昧になる ~二重派遣が違法で禁止される理由と問題点

まずは、派遣労働者に対しての責任の所在について。

例えば、派遣労働者が労災に遭ったケースを考えてみましょう。

本来であれば、派遣労働者が労災に遭った場合、派遣会社(派遣元)の労災保険が適用されるのですが、

労災保険の給付申請をするときに、(派遣契約を結んでいる)派遣先の企業が「どこで、どんな業務をやっていて、どのように労災事故に遭ってしまったのか」を証明する必要があるわけです。

ですが、二重派遣の場合だと、このような証明ができなくなるケースがあります。

そもそも、実際の派遣先とは、何の契約も結んでいませんし、再派遣先の事故当時の状況なんて知るわけがありません。

さらに、二重派遣をしているような会社は、そのことが明るみになる事を嫌うために、事実を捻じ曲げたりするケースもあるでしょう。

そうなると、結果的に労災保険をおろせない結果になってしまう可能性もあるわけですね。

2、労働条件が守られない可能性がある ~二重派遣が違法で禁止される理由と問題点

続いて、派遣労働者を守る労働条件について。

本来なら、派遣会社と派遣先企業が結ぶ「派遣契約」で交わした内容の範疇で労働をすることになるわけですが、

二重派遣の場合、実際に派遣される現場は、派遣契約なんて結んでいません。

その結果、契約した労働時間を超える残業の指示など、労働条件が守られない可能性が出てきます。

3、給料が低くなりがちである  ~二重派遣が違法で禁止される理由と問題点

続いて、派遣労働者の給料について。

二重派遣となっている現場では、給料が安くなりがちであることも問題となります。

それは、通常の派遣ならマージン料なしの金額が派遣先から派遣元へ振り込まれて、労働者の給料となるのですが、

二重派遣であれば、再派遣をする会社によってマージン料が発生してしまいます。

その分、派遣契約の金額が低く抑えられ、結果的に労働者の給料も低くなってしまうわけです。

以上です。

二重派遣による問題点、派遣労働者が被(こうむ)るデメリットのまとめでした。

二重派遣を予防・防止する方法 ~相談・告発先について

違法・禁止されている二重派遣を予防・防止する方法-1

最後に、二重派遣を事前に予防する際のポイントと、二重派遣となっている現場で働いているケースの対応について、まとめていきます。

まずは、事前に予防するポイントについて。

ちゃんと、派遣労働者自身が派遣契約書の内容をチェックすることです。

そこで、勤務場所がちゃんと派遣先の会社となっているかどうか。

もしも、派遣先では無かったり、「派遣先が指定する」といった曖昧な表現になっている場合は、派遣会社に指摘をいれましょう。

続いて、

すでに、二重派遣となっている現場で働いているケースについて。

この場合は、まずは指揮命令権を確認しましょう。

仮に、二重派遣のような形になっていても、指揮命令権が、ちゃんとした派遣先であれば、違法とはなりません。

なので、業務指示が誰から出ているか。

これが、再派遣先の人から指示をされている場合は、アウトなので、派遣会社の担当者に相談してください。

それでも、対応をしてもらえない場合は、以下の窓口に相談・告発することで、対応していただけるでしょう。

  • ハローワーク
  • 労働局相談窓口

以上です。

二重派遣を予防・防止する方法でした。

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