現在、IT業界でエンジニアやプログラマーとして仕事をしている私(当ブログ運営)ですが、前回「SES」に関する記事を書きました(以下)
→ SES契約とは?違法なブラックIT企業に注意してください
というのも、私自身が過去にSES契約による労働を経験したことがあって、その時の事も踏まえ注意喚起の記事を書いておこうと思ったわけです。
(今後、IT業界を志望する方が参考になるように)
で、上記の記事でも少し触れていますが、今回はSES以外の労働契約・・・派遣や請負についても、それぞれの特徴や違いについて、分かりやすくまとめておこうと。
きっと、「SES(客先常駐)と派遣の違いって何?」って方がほとんどだと思うので。
そういうわけで、順に書いていこうと思います。(以下、目次です)
- 派遣契約
- 請負契約
- SES契約
派遣契約とは・・・請負やSESとの違いについて
まずは、最も一般的で馴染み深い「派遣」について。
派遣事業をおこなっている派遣会社(派遣元)があって、そこに所属するエンジニアを派遣先(客先)に送り込むといった構図になります。
他の2つ(請負とSES)については「業務委託」という括(くく)りで、いわゆる「SIer」と呼ばれる業態になります。
一方、「派遣」は上記とはそもそも法的な扱いも違い、呼称も「SIer」ではなく「IT派遣」と呼ばれる事が一般的です。
というわけで、IT派遣の特徴を以下にまとめました。
- 「労働者派遣法」という法律に従っている
- 多重派遣は禁止されている(2重派遣や3重派遣など)
- 派遣会社の「マージン率」の公開義務がある
- 派遣エンジニアへの指揮命令権限は「派遣先」にある
- だが、雇用契約は「派遣会社」と結ばれている
- 派遣エンジニアは派遣会社だけではなく、「派遣先」とも労働基準法が一部適用される
- 派遣事業をするには、厚生労働省からの認可が必要・・・審査が厳しい(請負やSESよりも)
以上です。
上述の通り「労働者派遣法」に従うわけですが、これまでにこの法律の改正が何度かおこなわれており、例えば2015年には、同一の現場で働ける上限期間は3年となり、それ以降は正社員への雇用か、または所属する課orグループを変更しなければならない(派遣労働者への配慮)。。といった改正がおこなわれています。
今後も、このような法の改正によって「派遣」の在り方が変わっていく可能性は十分にありそうですね。
請負契約とは・・・派遣やSESとの違いについて
続いて、「請負」についてです。
上述していますが、請負契約は「業務委託契約」の一つに分類され、いわゆる「SIer」と呼ばれる業態ですね。
※業務委託契約は、業務内容や委託方法によって「請負契約」or「準委任契約(SES)」に分けられます。
というわけで、さっそく「請負契約」の特徴を以下にまとめてみました。
- 業務の成果物に対して報酬を支払う契約形態です。そのため成果物に対する責任が生じ、バグがあったり納期の遅延があった場合には責任を取らなくてはいけません。損賠賠償等
- 仮に納品後であっても、バグが見つかった場合には修正(無料)が必要になるケースがほとんどです。ただ、請負の契約内容によって、納品後の修正が必要になる期間が決められていて、大体1~3年間が上限となっています
- また「報酬」についても、業務がすべて終わり「成果物」が完成しなければ受け取ることができません
- 一方で、請負側のメリットは高い金額設定ができる傾向にあり、進捗報告も(SESのように)必要ありません
- 請負エンジニアへの指揮命令権限は「自社」にある。(派遣エンジニアは派遣先の管轄だが、請負は違う)
- 請負会社(SIer)と労働者は雇用契約が結ばれている。(客先(発注元)とは結ばれていない)
- 請負契約の開発は自社内で開発することが一般的となっています(逆にSESは「客先常駐」がほとんどです)
- 請負企業は、SESと比較して自社に技術力を抱えている会社が多いです
上記から、同じ「業務委託」でも請負とSESには大きな違いがあります。
特に、請負は業務の成果物に対して報酬が支払われ、そこに責任が生じます(納期遅れやバグは損害賠償レベルで、、)
SESは労働時間あたりの報酬なので、成果物に対しての責任もありません(納期が遅れようが、損害賠償を受けることもありません)
ここが最も大きな違いで、だからこそ「請負」はちゃんと自社に技術力を抱えている会社(優秀な人材を揃えている)であることが特徴となります。(少なくとも、SESよりは・・)
・SESとは?SIerや派遣との違い・見分け方と、メリット・デメリット(やばい・やめとけと言われる闇とは?)
SES契約とは・・・派遣や請負との違いについて
では最後に、SESについて。
SES(System Engineering Service)は上述の通り、業務委託の一種で法的には「準委任契約」と呼びます。
というわけで、以下にSESの特徴をまとめてみました。
- SES契約では、エンジニアの労働時間に対して報酬を支払う形態になります
- なので請負と違って、納期遅延やバグ等で損害賠償を請求されることはありません(労働による成果物に対しての責任は無いため)
- 極端な話、成果物が無くても契約で決められた労働時間分の報酬は支払わなければいけないわけです
- また、契約期間が終わった後のエラー改修も基本有償となります(請負は基本的に無償対応)
- 自社で開発をおこなう事は少なく、ほとんどが「客先常駐」で開発します
- SES契約の指揮命令権は、客先(常駐先)ではなく、自社(SES企業)にあります
- ですが、SES企業とエンジニアが必ずしも雇用契約を結ぶ必要はありません。これによってフリーランスエンジニアや別企業のエンジニアを常駐させることもできます。
- 上記のために、SES企業は人身売買会社・ピンハネ屋と揶揄されることも多い(雇用契約を結ぶこともなく、SESとしてフリーエンジニア等を客先に送り込んで、マージンをもらう。。といった事です)
以上です。
「多重下請構造」や「偽装請負」といったIT業界の悪しき慣習も、「SES」であることがほとんどです。
・「多重下請構造」は、以下の図のようにピラミッド構造になっている開発プロジェクトのことを指します。特徴としては下にいけばいくほど、労働環境が劣悪で報酬も少ないといった点があります。
・「偽装請負」とは、本来SES契約の指揮命令権は、客先ではなくSES企業にあるのですが、実質客先からの指示命令が常態化している事を指します。
出勤時間や退勤時間、残業の有無等、本来こういった労務管理を客先がおこなってはいけません。にも関わらず、実態は違うわけですね。
有給を取得するには、エンジニアは自社と客先から両方の許可を得なければいけない。。みたいな状態になっているわけです。
あとは、SESでは労働による成果物に対する責任を追わなくても良く、労働時間に対する報酬が必ず支払われるので、悪徳なSES会社なんかは、送り込むエンジニアができない仕事でも、できる!と嘘を付かせて契約させたり、
逆に、PCのセットアップやヘルプデスク(電話サポート)、その他雑務といった、本来エンジニアがやらないような業務でも、お金欲しさに、エンジニアの意志など関係なしに契約させたりします。
このような事があるからこそ、IT企業への就職や転職は非常に注意を払って選択する必要があります。
悪徳な会社やブラック企業に入らないように。。では。