営業戦略とは・・・「営業利益」を最大化するためのあらゆる事を指します。
ここでいう「営業利益」とは、企業会計的に表される指標のことで、
で表されます。
なので、粗利益を最大化して、「販売費(及び一般管理費)」をできるだけ抑えることを、「営業戦略」と定義します。
さらに「粗利益」を内訳で示すと、
※「売上原価」とは、販売した商品の原価(仕入れ値など)のことです。
となります。
今回の記事では、「営業戦略」を立てるためのポイントと、立案した営業戦略を企画書に落とす際の書き方やテンプレートについて、順に解説していきます。
以下、目次になります。
- 営業目標と戦略・戦術について
- 有名企業の戦略事例と、営業戦略の立案ノウハウ(立て方)について
- 営業企画書の書き方やテンプレートについて
- 営業戦略を立てる際の代表的法則「ランチェスター戦略」について
営業目標と戦略・戦術について
営業戦略の立て方(立案ノウハウ)を解説していく前に、まずは、営業目標と戦略・戦術について、解説していきます。
こちらは、特に会社の経営層や営業部のマネージャー層に関係している内容になります。
営業目標と戦略・戦術は三位一体であって、どれか1つでも抜けた場合、意味の成さないものになってしまいます。
これら三者が、相互に作用することで、初めて効果が出るのです。
特に、営業戦略と営業戦術を混同し理解してしまっているケースが多いように思います。
では、それぞれを解説していきましょう。
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【営業目標】
営業目標とは、下記のように、主に数値化して表されるものです
・売上高
・粗利益
・コスト
・成約件数
・顧客人数
・前年度からの伸び率
・対象としている市場でのシェア率などが、営業目標として定義できます。
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【営業戦略】
営業戦略とは、最初に定義したように「売上高、粗利益を最大化して、「販売費(及び一般管理費)」をできるだけ抑えること」を意味します。
また、営業戦略は、会社単位で決めることで、あくまで「机上の空論」であります。
営業戦略の基本は、まず現状を分析することです。
効果的に現状分析をするには、「3C」理論を使うと良いでしょう(下記)
・【市場(顧客)分析】 : 市場規模や、今後の動向。また顧客の特徴をまとめる。・【競合他社分析】 : 同じ市場の競合他社の強み・弱み・ポジションなどを洗い出す
・【自社分析】 : 競合他社と比べて、自社の強み・弱みを洗い出す。
これら3つの要素から現状を分析したら、
・ターゲット層は、現状のままでいくか、狭める(専門特化する)か、それとも新たなターゲット層にするか
・自社の強みを活かすか、弱みを克服するか、それとも新たな強みを作るか
など、「営業目標」を達成するための「営業戦略」を立案していきます。
また、もっと突っ込んで
「アプローチ方法」は、テレアポや飛び込み営業でいくのか、それとも、Webサイトや自社ブログを運営して、そこから集客していくのか、それとも、「お友達紹介キャンペーン」など、既存客による口コミや紹介を促す仕組みを作るのか。
さらに、テレアポや飛び込み営業のプロセスの固定化(社内共有ドキュメントの作成)や、顧客管理ツールの利用なども「営業戦略」に含まれます。
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【営業戦術】
営業戦略と営業戦術の大きな違いは、戦術の方は、社員一人一人にフォーカスしたモノであり、机上の空論ではなく、もっと具体的な行動レベルのモノになります。
言い換えれば、「営業戦術」とは、営業戦略を実践するための具体的な行動プランを意味します。
・いつ、誰が、どのような方法で、行動に起こすのか。
例えば、テレアポであれば、どのようなリストから、一日に何件かけて、何件の引き合いを取るか。を個々人に対して、具体的に示したのが、「営業戦術」になります。
以上、営業目標と戦略・戦術の解説でした。
※営業戦略と戦術の分類は、判断に難しい部分もあり、営業戦略の方で挙げている「テレアポや飛び込み営業のプロセスの固定化」は、個々人の行動レベルにも影響しているので、営業戦術ともいえます。
ここで、重要なのは、経営層の一存で「営業戦略」を立てたとしても、現場の行動レベルを基とした戦術部分と、整合性がなければ、その戦略は全くもって意味を成さない。ということです。
現場の1社員が、
「戦略として●●が立てられているから、自分は●●をしていけば良いんだ」といったように、個々人の戦術部分と、論理的に結びつけられる戦略である事が重要なのです。
なので、最初に述べたとおり、営業目標と戦略・戦術は三位一体であって、どれか1つでも抜けた場合、意味の成さないものになってしまうんですね。
3つの視点が整合性をもったときに、初めて効果的なものになるんです。
有名企業の戦略事例と、営業戦略の立案ノウハウ(立て方)について
当章では、最初に、有名企業の営業戦略事例を紹介して、そのあとに、営業戦略の立案ノウハウについて、順に解説していきます。
有名企業2社の営業戦略事例の紹介
普段利用しているような小売店や飲食店、美容院なども、思考を凝らせば、ちゃんと「営業戦略」が立っていることが分かります。
今回は、誰もが知っている企業の「営業戦略」についてピックアップしてみました。
まず、1社目が「マクドナルド」です。
マクドナルドは、ハンバーガーやチーズバーガーといった「80~100円」の集客商品と、ポテトやドリンク、クォーターパウンダーやメガマックといった粗利率の高い商品の2種類を提供しています。
これによって、ハンバーガー(集客商品)で集客して、セットのポテトやドリンク、また新製品で、しっかりと利益を確保するといった仕組みが確立され、それが大成功している事例が「マクドナルド」なんですね。
ここで重要なのが、「集客商品」と「(利益率が高く、本当に販売したい)商品」を明確に分けることです。
マックの「ハンバーガー」は、それ単体の販売では、全く粗利がない商品となっています。
ただ、「ハンバーガー」の役割は、あくまで「集客」なんですね。
これがうまく機能して、マクドナルドは、2012年までの8年間、既存店の売り上げを伸ばし続けてきました。
参考元:マイ・ストアニュース:マクドナルドの失速とこれからの新戦略について考えてみる
この営業戦略は、業界問わず、参考にできるノウハウであります。
例えば、エステ業界では「初回無料!」「初回お試しキャンペーン」といった営業戦略によって、集客数を大きく上げ、一回サービスを体験してもらうことで、効率よく2回目に促しているんですね。
そして、2回目につなげることができれば、一回目の赤字も回収できる。といった理論になります。
ここでは、初回無料サービスを「集客商品」として機能させ、2回目以降の(メインとする)サービスで、利益をしっかりと取っているわけです。
次は、「スターバックス」の紹介です。
スターバックスといえば、どんなイメージを持ってますか?
きっと、
- 「こだわりの厳選豆を使用した特別感のあるコーヒー」
- 「独自の世界観が伝わる内装や証明」
- 「居心地の良い空間や机・椅子」
- 「爽やかな笑顔で気配りのできた接客」
といったイメージを持っているでしょう。
一方で、「商品価格が高い」といった認識もみんな持っていると思います。
スタバが日本に進出した当初、コーヒー1杯300円といった価格設定に「日本では絶対に受け入れられない」と、反対の空気がありました。
しかし、蓋を開けてみれば、いまやカフェ業界では1人勝ち状態です。
これは、上記のようなブランドイメージを、誰もに植えつけた結果となります。
ブランドが認知され定着していくと、顧客のロイヤリティが増していきます。
顧客にとって、そのブランドイメージが他社との大きな差別化になるんですね。
「どこにでもある」が「ここにしかない」に変わるのです。
ここで重要なのが、例え、(他社と比べて)商品価格が高かったとしても、その価格を超える価値を感じることができれば、人はその商品を「購買する」ということです。
そして、「顧客が感じる価値」に、人が持つブランドイメージは大きく影響しているんですね。
低価格戦略や良い立地、新規性の価値というのは、簡単に「入れ替え」がきくのですが、「独自の価値あるブランドイメージ」というモノは、個々人にしっかりと根付くため、「替え」がききにくい。といった特徴があります。
スタバは、単なるコーヒーを販売しているのではなく、上記で挙げているような ”体験” を販売している。ということを覚えておきましょう。
この「体験」こそが、価値あるブランドイメージへと発展していくのです。
以上、有名企業2社の営業戦略事例でした。
営業戦略の立案ノウハウ(立て方)について
最初に述べている通り、「営業戦略」とは、粗利益を最大化して、「販売費(及び一般管理費)」をできるだけ抑えることです。
また、粗利益は「売上高 ー 売上原価」となるので、厳密に言うと
「売上高を最大化して、売上原価と販売費(及び一般管理費)をできるだけ抑えること」となります。
今回は、コスト面(売上原価と販売管理費)については考慮せず、「売上高」にフォーカスした販売戦略の立案(ノウハウ)について、解説していきます。
まず、「売上高」を内訳で示すと、
「売上高 = 客数 × 客単価」と定義できます。
なので、端的にいうと、客数と客単価を上げることが、「売上高」の向上に繋がるんですね。
それぞれを上げるポイントについては、下記記事にてまとめていますので、ぜひ見ておいてください。
・売上高(客数×客単価)をアップする(上げる)ための方法について
以上です。
営業企画書の書き方やテンプレートについて
ここでいう「営業企画書」とは、営業戦略をドキュメント化したものを指します。
当章では、この「営業企画書」をまとめる時のポイントや、テンプレートについて紹介していきます。
以下に、企画書の記載内容と順番をまとめました。
- 【作成者と対象者】 : 営業企画書の作成者と、営業企画を施行する対象者(営業部の人)を掲載します
- 【営業企画の実行期間】 : 例 「2014/4/1 ~ 2014/9/1」
- 【営業目標】 : 営業目標を掲載します
- 【現状】 : 営業目標に対して、現状の状況を記載します
- 【営業戦略】 : 現状から、営業目標を達成するための戦略を掲載します
- 【予算とその内訳】 : 営業戦略に必要な予算と、その内訳を記載します
- 【戦略に必要となる人的リソース】 : 営業戦略に必要な人員と、それぞれの役割を記載します
- 【スケジュール】 : 目標達成までの、具体的なスケジュールを記載します(できれば、個人個人のスケジュールも設定する)
以上です。
営業戦略を立てる際の代表的法則「ランチェスター戦略」について
ランチェスター戦略とは・・・企業間の販売競争に勝ち残るための理論を体系立てたモノになり、「販売戦略のバイブル」ともいわれてます。
日本でも多くの企業が「販売戦略」を立てる際に、この「ランチェスターの法則」を参考としていて、代表的な戦略理論となります。
もともとは、戦争を、はじめて定量的、統計的、数学的に考え出したのが、「F・W・ランチェスター」という人で、戦争による戦い方(地域の奪い合い)に関しての、「軍事戦略理論」でした。
そしてこの法則を、「販売(営業)戦略」に置き換えのが、「ランチェスターの法則」になります。
「ランチェスター戦略」は、企業を大きく「強者(市場のシェア率1位)」と「弱者(市場のシェア率2位以下)」に分類し、それぞれで採る戦略を変えることが、基本法則になります。
要は、強者がとるべき戦略と、弱者がとるべき戦略を分けて考え、仮に、弱者が強者の戦略をとった場合、それは、根本的に間違ったやり方となるので、非常に効率の悪いモノとなってしまいます。
それぞれの戦略を簡単に説明すると、
- 【強者 (市場のシェア率1位の企業)】 : 強者は、”人数” で勝負できるようにすることが戦略で、(市場シェア率2位以下の)弱者が取った差別化要素を無くすために、弱者のマネをします。
真似をすることで、差別化要素がなくなり、単純に「人数」での勝負に持ち込めるといったものです - 【弱者 (市場のシェア率2位以下の企業)】 : 弱者は、事業領域を細分化し、勝ち易い地域・流通経路、ターゲット層、商品を設定し、そこに経営資源を重点投入します。
一つの特殊な分野に特化することで、そこまで手を回す余裕のない大企業の隙(ニッチ市場)を突いて、シェアを拡大していく事が目的です
以上が、それぞれの特徴になります。
営業戦略を考える際の「一つの理論」として、参考にしましょう。
※ランチェスター戦略について、もっと詳細な情報については、下記記事にてまとめています。